第43章

稲垣栄作は婚約指輪を高橋遥の薬指に滑らせた。

高橋遥は指を軽く丸めた。

稲垣栄作は彼女をじっと見つめ、ついに彼女は指をまっすぐに伸ばし、彼に指輪をはめさせた……その指輪は彼女の細い指に輝き、まばゆいほどの光を放っていた。

稲垣栄作はかすれた声で言った。「稲垣奥さん、お帰りなさい」

高橋遥の体が微かに震えた。

彼女はついに、彼のもとへ戻ってきた。彼女はついに自分自身を徹底的に稲垣栄作に売り渡した。ただし、これからは稲垣栄作の妻ではなく……稲垣奥さんとして。

……

稲垣栄作はその夜、病院に泊まらなかった。

翌日、彼は姿を見せず、代わりに萩原裕大が直接病院を訪れ、高橋遥と面会した。...

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